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ぎこちなく触れた口唇はすぐに離れた。
目と目が合って、もう一度触れると、綾花は静かに言った。
「私から求めるのは、これが最後。私のことだったら、いつでも利用して構わないから……」
朔良の腕の中からするりと抜けて、綾花は教室を後にした。
引き留める理由もなく、独り残された朔良は、髪を掻き上げるてを途中で止めて、そのまま蹲った。
深い溜め息を吐く。
「強がんな、バカ……」
クラスメートからの突然の告白に朔良は頭を悩ませる。
1年の時からずっと同じクラスで、全く綾花を知らないわけじゃない。
明るくて素直だし、人当たりもいい。
今まで、綾花の悪い噂など、聞いたこともない。
だから、困る。
遊んでいる女だとわかっていたら、もっときっぱり断っていた。
キスの瞬間、震えていた綾花の手。
自分からそんなことをしたことなど、なかったのだろう。
緊張が朔良にも伝わっていた。
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