気持ちの行方

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   長い髪を揺らして振り返った芹佳は、申し訳なさそうに朔良を見上げた。 「そうか。あんま遅くなるなよ」 「うん……」  互いに受験を控えて、2人で過ごせる時間は、以前に比べて格段に減っていた。  たまに誘っても、隣りのクラスの友人と図書館通いをしている芹佳は、勉強を優先してしまう。  一緒に帰るくらい…と内心思うも、この微妙な時期に無理強いはできないと、朔良は思うだけに留めた。  放課後、暗くなるまで本を読んで帰るのが日課になっていた。  エスカレーター式の学校で、推薦が内定している朔良は、今の成績を落とさなければ、それでよかった。  勉強が全てではない。かといって、恋愛が全てというわけでもない。  けれど、朔良にとって、毎日が物足りない日々。  そんな時、不意に綾花の顔が浮かんだ。  いつでも利用して構わない…――。  そう言った時の綾花は、傷つくことを覚悟しているような顔をしていた。 「あれ、まだいる」
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