気持ちの行方

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   薄暗い教室に声が響き、朔良は身体をびくつかせた。 「こんな暗いとこで本なんか読んでたら、よけい目悪くするよ」  机の中を探りながら言う綾花は、この間のキスを忘れてしまったかのように普通の態度で接してきた。  内心、ドキドキしているのは自分だけかと思うと、ちょっと面白くなかった。 「お前からは話しかけないんじゃなかったのか」 「……クラスメート、だもん、話しかけるくらい、普通だよ。林田さんと一緒に帰らないの…?」 「芹佳は友達と図書館に……」 「途中まで一緒に帰るくらいいいと思うけど……」 「関係ないだろ!」 「2人の問題、か……」  近づいてきた足をぴたりと止めた綾花を見て、朔良は息を呑んだ。  八つ当たり、してしまった。 「ごめん……」  朔良の声は、静かだからこそ聞こえるほど小さかった。 「謝ることないよ」  綾花は首を横に振って、朔良の前に歩み寄る。 「……十河くんは、林田さんのこと、信じてる?」
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