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その質問に朔良は瞬きを繰り返した。
「……信じてるに、決まってるだろ」
「そっか…そう、だよね……」
綾花は精一杯の笑みを浮かべた。すぐに作り笑いとわかるものでも、笑ってみせた。
「あいつを疑ったことなんてない」
「1度も?」
好きなら気になることくらいたくさんあるのに、疑ったことがないなど、綾花には信じられなかった。
自分から朔良の傍に行かないようにはしていたが、ずっと見ていたから。
毎日、教室に残る朔良を。
そして、芹佳も。
目で追ってしまうから、気づいてしまった。
「……」
綾花の問いかけに、朔良は口を噤んだ。
芹佳を疑ったことはない。その事実に変わりはないはずなのに、その気持ちが、少しずつ揺らぎ始める。
「私だったら、勉強しなきゃいけないのわかってても、一緒にいる時間くらい作るよ」
あの日、偶然聞いてしまった事実だけは、朔良には言えない。
だから、自分自身の気持ちを伝えようと、朔良を見つめる。
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