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ハニーミルク
ガッ、バキッ、ボコッ、
今日もまたあの音がする。
「……っ痛ぇ」
「弱いくせにあんま、
調子乗んなよ?」
今日もまた、
そう吐き残して去っていく。
俺の名前は今井北斗。
毎日が喧嘩三昧の日々。
負けなしの記録を
持つ俺のところには、
何度も喧嘩を売ってくる
馬鹿が耐えない。
その生活に最近は
抵抗すらなかった。
「眠っ……。
つーか、頭痛ぇ……」
いつもは喧嘩のあとは、
返り血で服が汚れているけど
今日はそれ以上に
頭の痛みが酷かった。
頭が痛い中、いつものように
いつもの場所へ向かう。
【体育館裏】
「あぁ、疲れた。
つーか、何でこんな
頭痛ぇんだよ?」
それはもちろん、
昨日飲んだ酒の量だった。
頭の痛みを和らげるため、
体育館裏で寝ようとしたときだった。
ちょうど部活を終えた
1人の女が体育館から出てきた。
その女は俺と目が合った途端
驚きの顔をした。
まぁ、学校では
好き放題やり放題の
人間だからそんな反応は
不思議ではなかった。
ダルかったら、授業はサボるし
眠けりゃ勝手にどっかで寝てるし。
売られりゃいくらでも喧嘩は買う。
いわば、この学校の問題児だから
近寄る人間の女の反応には
対して気にもとめなかった。
でも、その反応は
俺を見て驚いたのではなかった。
目が合った瞬間、
女がある言葉を発した。
「怪我してる!」
そう言って、その女は
怖がる素振りもせず
俺のところへ近付いてきた。
そして、鞄からハンカチを出した。
「ちょっ、いいって。
こんくらい放っときゃ治るから」
「ダメだよ。放ってたら
怪我治らないよ」
そう言って、自分の
ハンカチを傷のところへ
そっと寄せた。
「マジでいいから」
「ダメだよ。
ちゃんと手当てしないと」
そう言いながら、
簡単だけど傷の部分を
癒すかのように手当てしている。
結局断っても手当てするので
黙って手当てしてもらうことにした。
でも、救急箱も何も持っていない
その女に手当て出来る
範囲は決まっていた。
それでも、手当てされた部分は
他に比べると確実に癒されていた。
「ハイッ、これでOK」
そう言って女が立ち上がり、
去って行こうとしたときだった。
俺の口からは咄嗟に
言葉が出ていた。
「お前名前は?」
女は振り返り、笑顔でこう言った。
「羽崎絢花!」
そう言って女は走っていった。
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