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白を基調とした神社の着物に身を包んだ二人の子供。共に病的なほど色が白く、真っ直ぐ揃えられた前髪を持つ。黒目がちな顔は表情を読み取ることが難しい。
この人形のような二人は、何から何まで気持ち悪い程に“同じ”だった。
「やあ、アカリにカガリ」
間違い探しのように僅かに異なっているのは、その名前と性別、後ろ髪の長さくらいだろう。
水里 燈
水里 篝
この双子こそ、健太が苦手とする唯一の人物だった。同い年で同じ学校にも関わらず、会話しているところを見たことがない。
まぁ彼らを苦手としない人がいるなら、会ってみたいくらいなのだが。
「君達も手伝いに駆り出されたの?」
基本的に僕は角を立てない人間だ。この二人とも普通のコミュニケーションを試みる。しかし僅かに上擦った声は、引きつった笑顔と相まって、かなり怪しいものになっていた。
「私達は神社の後継」
「灯籠(とうろう)様の案内役」
微かな口の動き以外は少しも表情を変えない。こもった声はどちらが喋ったかもわからない程にそっくりだった。
「えっと……二人は神社の子だったもんな。きつくて嫌んなるよね」
何とか会話を成立させようとする僕の背中に、荷車が何度か打ち付けられた。健太からの“関わるな”という無言の攻撃が続く。
「嫌?」
二人は揃って首を傾げる。本当に不思議そうな表情だ。
「嫌じゃないの?面倒くさいじゃん」
もはや攻撃するのも諦めたのか、健太は荷車を背もたれに座り込んでしまっていた。
「水を以て和を成し卦を示す。それが水和卦村の役目」
「知られてはならない最後の場所」
抑揚のない声が意味のわからない言葉を羅列する。
「あ――……」
流石に意思疎通を諦めた僕は、作り笑いのまま固まった。本当に何なんだこいつらは。
助けを求めて健ちゃんに目を向けると、案の定“ざまあみろ”という顔をされた。
「透夜!健太!サボってる暇があったら車から荷をおろせ!」
顔を上げると、五十メートルほど先に強面の爺さんが立っていた。坂の上からだと余計に迫力がある。どうやら神社のすぐ近くまでもう登っていたらしい。
慌てて鳥居まで登る僕達を、双子は無表情で見届けた。
「君はわかる筈だよ」
「他の誰よりもね」
その謎めいた呟きは、鳥居へと急ぐ僕の耳には
届かなかった。
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