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小学生たちが下校する時間。
さっきまで静かに降っていた雨が上がった街路樹の下。
流れ行く車の音、通り過ぎていく人や自転車に怯えているのか震えているまだ目が開いたばかりの仔猫がいた。
飼い主も親もいないから仔猫に名前を付けてくれる存在はない。
名無しである。
名無しの存在に最初に気付いたのは下校中の小学生ではなく。
最近妻を亡くしたおじいちゃんである。
仔猫名無しは春の真ん中の空気を感じてるフリをして、暖かく優しい、そして奥には哀しいおじいちゃんの目を反らしていた。
名無し、雨上がり青葉を少し見上げようとして、よろける。
僕はどこにいくんだろう。
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