旅立ち

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1788(天明8)年、六月。 下総の地には雨が強く降っていた。 梅雨の時期が近づいた。 榊真澄が八重という女性と、慎之介という名の少年を助けて二日が過ぎた。 真澄は自分の通う天真正伝香取神道流剣術の道場、神風館に来ていた。 「……ということです。先生。」 真澄は二日前の詳細をすべて話終えた。 「うむ、そうか。」 白い総髪に髭を生やしている男が頷く。 この男こそが真澄の師。 天真正伝香取神道流の宗家、飯篠盛重(いいざきもりしげ)その人であった。 飯篠は所用で出掛けており、今朝帰宅したばかりであった。 弟子から真澄の遭遇した事を聞き、その後呼び寄せ詳しい経緯を聞いていたのだった。 真澄の話を聞き終えた盛重は刀を取り出し、紙で刀を吹き打粉を付けた。
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