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「主人の遺言に従い私達は慎之介様を連れて日光に向かったのです。しかし…」
「追っ手ね。」
そう言った真澄に八重は頷く。
「最初は十人いました、が、日光に向かうにつれ、一人、また一人と死んでいきました。真澄様はわかると思いますが、あの五人に…」
八重の目から涙が伝う。
「あの五人は突如襲ってきました。慎之介様をよこせ、そしてこの鏡も渡せと。 勿論私達は抵抗しました。しかし、あの五人は強く歯が立ちませんでした。」
(確かに強い…特にあの男が。)
真澄は思い出していた。
黒頭巾の男のことを。あのまま戦っていたら、真澄はこうしてここに居なかったかもしれないと。
「飯篠様、榊様、お願いがあります。私は体がまだ動きません。代わりに慎之介様を日光まで連れていって頂けませんか?」
八重は深々と頭を下げた。
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