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もしかしたら俺は二人の邪魔になっているのかもしれない。
話しているうちにいろんな感情が内混ぜになって涙が零れそうだった。
けれどさすがにそれはかっこわるすぎなので、俺は唇を噛んでそれをやりすごした。
すると突然久野にぎゅっと抱き締められた。
「…ひ……久野…?」
俺が動揺して固まっていると、耳元で久野の声がした。
「ごめん。辛かったんだな。話してくれてさんきゅ。」
そう言って抱き締めてくれている久野の腕のなかは心地がよくて、とても安心した。
(そういえば小さい頃もよくこうやって慰めたりしてくれたっけ…)
なんだか懐かしかった。
俺が黙って身を委ねていると久野は今度は少し体を離して俺の肩をつかんだ。そして正面から顔を覗き込むようにして
「何かあったら…俺に言え。力になれるかは別として、お前が我慢できなくなったら俺が捌け口になってやる。いつでも、どんなことでもぶつけてくれていいからな」
と言った。
今の俺にとってこれほど力強い言葉はなかった。
俺は、やっぱり久野に話してよかった、と安堵したのだった。
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