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深夜、纏わりつくような息苦しさを覚えて、彼女は目を覚ました。
開け放したままの窓からは、風すら入ってこない。
まだ暗闇に慣れきっていない目を擦り上半身を起こすと、彼女は膝に腕を置いて髪を掻き上げた。
いくら蒸し暑いからといって、こんな時間に目覚めたのは久しぶりのことだと思いながら、床に足を放り出して視線を落とした、直後。
瞬きを忘れ、瞳を見開き、声をあげることもできずに彼女の口唇は震えた。
余計な肉のついていない細い足首に、血の気のない白い手が、纏わりつく。
それは、小柄な彼女の手よりも小さく、まだ苦労を知らない幼子のようだった。
彼女の存在を確かめるように、その手は足首からふくらはぎへと伝う。
足をばたつかせて振り払いたいのに、彼女の身体はぴくりとも動かない。
心の中で叫ぶ戦慄の声も、何かにせき止められたように喉元に燻るだけだった。
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……っ!)
身動きが取れず、瞳を逸らすこともできず、足を這う手をどれだけの時間見つめていたかわからない。
ベッドの下には洋服や物を収納していて、人が入る隙など、ない。
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