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カーテンを閉め、窓は開けっ放しになっているけれど、誰もが眠っている時間に、七階に位置する部屋に子供が入り込むのは無理がある。
足に纏わりつくのは、氷のように冷たい手だけで、それ以外の部位は彼女の瞳には映らない。
つじつまの合わない状況を前に、これが心霊現象なのだと自覚しながら、彼女の心は目の前で起きた出来事を否定した。
焦りで速まる鼓動。
それは耳元で聞いていると錯覚するほど大きく刻む。
首筋に絡みつく圧迫感で未だに声が出ない。
彼女の意識は、重く冷えた背後に集中していた。
動かせる範囲で視線を向ける。
不意に、耳元に吐息を感じて、彼女は息を呑んだ。
おねえちゃん、いっしょにいこう…――
無邪気な笑い声が鼓膜を震わせる。
頭のてっぺんから、熱が逃げていくのを彼女は感じていた。
(嫌だ、行かない、一緒になんて行かない…――!)
心に強く念うと、嘘のように身体が軽くなり、彼女は肩で息をして、覚束ない足取りで部屋の電気をつけ、ベッドに横たわった。
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