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『俺が変わっても、親友のままでいろよ』
『当たり前だろ』
高校の卒業式、二人は笑顔で別れた。
それぞれが歩む道へ向かって…――。
あれから五年、忙しい日々を重ねて、気づけばこんなにも時が経っていたと、拓人は親友の顔を思い浮かべながら待ち合わせ場所へ急いだ。
互いに大人になっただろうと、期待に胸膨らませながら……。
そして、運命の瞬間。
「久しぶり」
「は!?」
予想もできない変貌を遂げた親友を前に、拓人は挨拶も忘れて素っ頓狂な声を上げた。
「やっぱ驚いてる。俺だよ、夏樹」
浮かべる笑顔は面影を残しているが、目の前の姿は、揃ってやんちゃをした記憶など、毛の先程も呼び起こさない程に変わっていた。
拓人の脳裏に卒業式に交わした言葉が過ぎる。
「言っとくけど、全部、だから」
「は!?」
「ちょっと変わっただけだって」
「ちよっとじゃないだろぉ! 男辞めるなら相談くらいしろよぉお……」
「もうやっちゃったし」
にこりと笑って、夏樹はスカートを靡かせて歩き出した。
五年振りに再会した親友は、男であることに別れを告げていた。
何があったんだ。
その言葉を、拓人は飲み込んだ。
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