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深く、深く研ぎ澄まされた感覚に触れる刺。
それは、触れるか触れないかの、ギリギリの所で止まったままで、いつでもとどめを刺すことができた。
本当は知っていた。
知っていたからこそ、知らないフリをした。
認めてしまえば、終わりを意味し、受け入れたことになる。
不様になりきれず、沈黙を守り続けた結果を前に、私はただ、冷たくなった部屋をぼんやりと眺めていた。
当然、か…――。
言葉にしかけて、呑み込んだ想いは、溜め息に変わる。
一緒にいながら、彼に思う事の半分も伝えられなかった。
言葉にしないと、わからないだろ。
溢れる想いを言葉にできなくて、突き放されてなお、喉元に燻る。
押し潰されそうな程の胸の傷みを伝える術が見つからなくて、心は音を立てて、ひび割れていく。
言葉が足りない。
いつも同じ事でぶつかる。
涙で繋いだ心は、その形を留めるのが精一杯で、もう限界に近い。
なりふり構わず追いかけたら、受け止めてくれる――?
胸の中でなら、いくらでも云えるのに……。
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