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クリスマスイブの朝、病室はそんなに寒くなかった。看護婦さんに、
「採血しますから、こう君と一緒に、処置室まで来てくださいね」
と言われ、こう君を抱っこして、処置室の前で待っていた。
「ママ、赤ちゃんの声が聞こえるねぇ、なんで泣きよるんかなぁ、お腹すいたんかなぁ」
「そうやね。赤ちゃん泣きよるね」
この会話は、二度と忘れない。
「こうくーん、採血するよ~、お母さんは外で待ってて下さいね」
看護婦さんに言われ、
「こう君、頑張って!ママは外で聞いてるよ」
と言い残し廊下で待った。いつも、採血ではこう君はものすごく大声で泣く。
「ママーママー、ママー、ママー」
心はいつも痛い。採血の時くらい、手を握ってそばにいてもいいのでは?そんな事を考えていると、こう君の泣き声が止まった。
採血終わったのかなぁと、少しほっとしていた。
でも…
なかなか、出てこない…
胸騒ぎがした。
看護婦さんが飛び出してきて、ナースステーションの方へ走って行った。
おそる、おそる、処置室を覗くと、こう君は目をつぶってる。とっさに、叫んだ。
「こう君、ママよ!こう君!こう君!ママここよ。」
先生は心臓マッサージを続けてる。ぞくぞくと医師や、看護婦が入ってくる。婦長まで来た。でも、叫び続けた。
「こう君、どうしたん、ママここよ」
一人の看護婦に
「お母さん、外で待ってて下さい、先生たちが一生懸命処置してますから」
と言われ、何も言わず私は廊下に出た。立ってられなくて、看護婦に支えられたのは覚えている。![image=161698322.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/161698322.jpg?width=800&format=jpg)
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