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…ちょっと先に警官になったからって、ずーっと人を下僕の様に扱いやがっ…
―殺しちゃえばいいじゃないですか?―
…えっ?…
小林は自分の頭の中で、誰かが囁くのを聞いた。
聞き覚えがあった…。
…なんで今、話しかけて来るの?…
―今、あなたは私に背中を押して欲しいと思っているでしょ?…あなたをお助けしたいと思って…―
小林の〔頭の中〕で、〔会話〕が始まった。
しかし、小林はマウスを握り、動かしながら仕事を続けている…。
傍目から見ると、何も異常な事はない。心なしか、目が虚ろになっている感じはあるが…。
…それは仕事が終わってからって考えていたじゃない?…
―あなたは、もはや自分を抑える限界に来てるじゃないですか?…それにいつ実行してもいい様に、昨日〔準備〕はすべて終わらせていますよね?―
………うん……その…通りだね……でも……
―私は、〔あなた自身〕なんですよ…さぁ、〔自分〕を開放してあげましょう!―
…スカッとかい?…
―そうです…スカッーっとしますよ―
…じゃあ、…スカッーっと、やっちゃおうかなぁ~フフフフ…
「…おい、小林。お前動きが遅くなってきてねぇか?疲れるのはまだ早ぇよ、しっかり見ていけよ…」
沼田が自分のパソコンに向きながら、小言を続けている中、小林は、
「どーもすいませんねぇ~沼田さん…ちょっと右手がだるくなってきちゃってぇ~…」
小林は右手をマウスから離し、ブルブルと振った。
「軟弱なんだよ!しっかりしろよ!」
…コイツさえ、いなけりゃ…そうさ…………………………コイツさえ……消えれば………………
……スカッ――っとするんだよなぁ~…
小林は薄笑いを浮かべている。
目の光はビー玉の様に無機質だ。
振っていた右手は動きを止めて、机の上のペンスタンドに行方をゆっくりと変えた…。
そして、〔ある物〕を取り、ユラリと立ち上がる。
沼田はそれを見咎め、立ち上がり、
「お前どこにいくんだよ!…なに…」
小林の顔はニタリと笑っていた…。
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