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「さぁ、調書を取って、仕事終わらせて一杯やらないか?島峰、お互い上がりだろ?」
「一杯だけなら付き合えるが、そう遅くまでは飲めないぞ」
苦笑いで、長身の島峰刑事が応える。
「構わないよ…しかし愛妻家だなぁ」
「お前も分かるさ…」
笑いながら2人も署内に入って行った。
その時…
「キャ―――ァッ!」
女の悲鳴が聞こえた。
2人に緊張が走る。
悲鳴はネット犯罪課から聞こえた。
2人は目で合図をしてネット犯罪課のドアに近付く。
島峰がドアのノブに手をかけて、少し開けて覗いた。
そこには…
パソコンを数台置いて並んでいる机の列の間に通る、通路の床に、男が1人倒れている。
そのすぐそばで、若い男がニヤけた顔で立っていた。
見覚えがある。
ネット犯罪課の小林だ。
手には何か細長い金属の棒状の物を持っていた。
「…おい、ショーティ…小林の様子が変だ、誰かが倒れてる」
声を潜めて島峰がスマイソンに言った。
「…あいつ、手に何か持っている。凶器だろう…まず俺が入って引きつける。お前、隙をついてあいつを確保してくれないか?」
「わかった。気をつけろよ…」
スマイソンは了解し、ドアで待機をする。
他に警官達が何事か?と数人やって来たが、スマイソンと島峰が唇に人差し指をあて、静かに…と促す。
緊張の中、島峰がドアをそっと開け、部屋の中に入った。
「…おい、小林…どうした?何してんの?お前…」
ゆっくりと歩みを一歩一歩進めながら、穏やかに言った。
「…あれ?…島峰さん…なんか用ですか?…へへっへへっ…」
部屋に入って来た島峰を認めた小林が、ニヤつきながら応えた。
目の焦点が合っていない…
いつもの小林の雰囲気とは、まるで違う…島峰はそう思った。
「お前…足下に誰か倒れているが、何したんだよ?」
すると、部屋の隅で震えて座り込んでいる女性が、やはり震えた声で言った。
「こっ、小林くんが、ぬっ、沼田さんの首を…刺しましたぁ…」
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