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いつもの様に部屋の奥へ進む。いつもと違うのは彼が部屋に居る事。
彼と事を終えてから身体が妙に懐かしい感覚を覚える 気分がいい。
「只今、具合どう?窓開けるわね」
男は冷たい気配を察知したものの最悪の状況から抜け出す術を知らない。
彼女の身代わりが出来上がる。
両足があらぬ方向に捻れ息も荒い。
全身に激痛が走る。
形容し難い苦痛のフルコース 死んだ方がましとは良く言った物だ。
やがて意識が遠のいて行く 暫しの静寂が訪れた。
幸い彼女に男の生命を奪い取る力量は無いらしい。
深い静寂に包まれた闇の中 微かにドアを叩く音が響いた。
「ヤクザ出ていけ!」
「居る事は分かってますのよ!」
ドンドンドン!
ドンドンドンドン!
未亡人はドアに消えた女性に、会った事も無いあの男についてどうしても尋ねてみたかった。
実際の所 男はヤクザなる人種では無かったが未亡人に映る男の姿は異様な程禍禍しく、いかつい風貌がそれと勘違いしても無理は無かった。
一刻も早く立ち去ってほしい 一度思い立つと落ち着かない、傍迷惑なこの性分が男にとって希望の光と成す事は言うまでもない。
未亡人は返事が無い事に苛々を募らせた。ノブに手が伸びる。
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