苦手ないかれ女

1/2
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ

苦手ないかれ女

近頃、精神状態の不安定な人に何故か縁がある。悩みなら誰もが抱えていて、人それぞれだ。 いつもの様にエレベータに乗り込む。 「今日は居ません様に」 しかし望みは叶えられなかった。 足早に駆け抜けるつもりが声を掛けられた。 「今晩は」 どうしたものか言葉が出ない。仕方なく愛想笑いで誤魔化した。嫌な後味が残る。 「引越して来られたの?」 ずっと前から居るわ。 「あたくし、田辺と申します。」 毎日毎日執拗に、まるで取り憑かれた様な掃き掃除。 ゴミなんて落ちていないマンションの通路。 この人の最近の様子は目に余る。突然その人が 「ヤクザ 出て行け」 「あたしには 関係ない」 勘弁してよ、誰がヤクザよ 焦って鍵穴に入らない。 絶対に頭 おかしい、いかれ女。 部屋に入って胸を撫で下ろすが、ドアの向こうでまだブツブツ喋っている。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!