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1日目
ついてる!
「クックックックックッ・・・」
堪え切れずに笑いが込み上げる。
息苦しくて頭に血液が逆流する。
こめかみを打つ脈が心地よい。
不意に言葉が漏れた。
「こんな日もあるよな」
顔が思わずほころぶ。
競馬で大穴を当てたのだ。懐は暖かい、腹ははち切れそうだ。
ギャンブルとは時の運 動き出した時の女神は 彼に微笑んでいる訳では無かった。
これから起きる出来事に この憐れな男に
哀しい瞳で見つめるだけ・・・・
陽が暮れる。
その時が近づく。
「おおっ 夕陽がやけに赤いな! 明日も晴れってか ブラリ ブラリの散歩道~」
上機嫌で独り言が 勝手に口を突く。
川を右手に 土手道を ゆっくり歩きながら 何気なく眼に入った 川沿いに建つ陰気な マンション。
「?」ううん?
「えっ? 何だ! ありゃ!」
3階のベランダに 着物姿らしき男が こちらを向いて立って居る。
確かに首をこちらに向けて立っていた。
視野が曖昧な 夕暮れ時で 眼の錯覚と 大して気にせず通り過ぎようとした刹那
女の悲鳴が聞こえた。続いて「ドシャン」と鈍い しかし はっきりと
見てはいけない姿を想像するに値する "音" を聞いた。
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