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そしてついに、白井が先にテラスから立ち去った。その足取りは早々としており、目の縁を押さえていることから泣いているようだった。
涌井さんはと言うと、少しイライラした様子で納得いかない表情をしている。あんな顔初めて見た。
そしてこの状況に気付いているのは、『僕』だけである。何とかして注意を引かせてやりたいが、あんちゃんに関してはさっきの忠告、有栖に関しては場を乱す。
この二人に頼るのが間違っていたのかもしれない。僕は悔しさから唇をキツく噛んだ。
すると涌井さんは思い立ったように、ロッジ内に入って行った。足取りは重く、何か思い詰めるかのように……。
不吉な予感が僕の胸中に立ち込める。しかし二人は知ったこっちゃない様子である。
その後、気になりながら、二十分くらい有栖と推理小説について語っているとロッジ内から甲高い悲鳴が聞こえた。
僕、有栖、あんちゃんと顔をみんな見合わせて、席を立ち、慌ててロッジ内に駆け込んだ。永井が階段を登っていくことから、彼が一階にいたことを証明している。
彼のあとを追うように、僕たちは急いで、階段を駆け上がった。階段を上がると直ぐに、その場に凍りついたように固まる涌井さんがいた。顔を蒼くし、口元を押さえている。
隣には正太郎がいた。彼も固まって動けない様子である。僕は恐る恐る中を覗く。するとベッドにすがりつくように泣きじゃくる林がいた。
部屋は真っ赤だった……。
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