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「…正気か?お嬢さん」
意外にも、男は素直に話には乗らなかった。
「私を殺したら…名声が得られるんでしょ?…お金が貰えるんでしょ?」
「…あんたは、人間の欲を満たす為だけに殺されていいのか?」
「…だって、もう生きてても仕方ないじゃない!!」
男は少女の強い口調に少々たじろいだ。
「私のお父さん…お母さん…私の目の前で…殺された…」
今まで溢れさせまいと耐えていたものが、堪えきれず流れ出す。
「これ以上…ここで何をしろと言うの?私は…あなたに負けたのよ」
早く楽にして欲しかった。
今こうしているのも苦しいのに、また起き上がって戦おうなんて、出来ない。
生き延びても、自分にはもう生きる目的も見つからない。
「人思いに殺して…あっちに逝かせて…!」
涙で視界が更に霞む。
この男が早く自分の心臓を貫いてくれる事を切に願った。
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