飛びたき者

18/21
前へ
/23ページ
次へ
「まぁ…今の状況なら仕方ないのかも知れんが…」 男は少し困った顔で少女の顔をじっと見ると、彼女の乱れた前髪をそっと掻き分けた。 「…!!」 次の瞬間、少女の体は男の腕によって持ち上げられていた。 朦朧としていた意識が驚きによって戻って来る。 「あなた…私をどうするの?」 「人間にも良心というものがあるのだよ、天使のお嬢さん」 男は少女に笑いかける。 「私を殺さないってこと…?」 「こんな弱ってる女の子にとどめを刺すほど私は残忍な男ではない」 殺して欲しいのに。 もう死んでしまいたいのに、人間によって生かされるなんて… この上ない屈辱を感じた。 「…下ろしてよ」 少女はぼそりと言った。 「殺してくれないなら…自分で死ぬ。私にとってあなたは…敵以外の何者でもないんだから…だから…下ろしてよ!!」 男は敵意剥き出しの少女の口調に驚いたようだったが、すぐに険しい顔をして言った。 「そんな事を易々と言うな!!」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加