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「まぁ…今の状況なら仕方ないのかも知れんが…」
男は少し困った顔で少女の顔をじっと見ると、彼女の乱れた前髪をそっと掻き分けた。
「…!!」
次の瞬間、少女の体は男の腕によって持ち上げられていた。
朦朧としていた意識が驚きによって戻って来る。
「あなた…私をどうするの?」
「人間にも良心というものがあるのだよ、天使のお嬢さん」
男は少女に笑いかける。
「私を殺さないってこと…?」
「こんな弱ってる女の子にとどめを刺すほど私は残忍な男ではない」
殺して欲しいのに。
もう死んでしまいたいのに、人間によって生かされるなんて…
この上ない屈辱を感じた。
「…下ろしてよ」
少女はぼそりと言った。
「殺してくれないなら…自分で死ぬ。私にとってあなたは…敵以外の何者でもないんだから…だから…下ろしてよ!!」
男は敵意剥き出しの少女の口調に驚いたようだったが、すぐに険しい顔をして言った。
「そんな事を易々と言うな!!」
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