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「サクヤっっ!!」
咄嗟に駆け寄って僕が彼を抱き上げた途端、
「うぁぁぁっ!」
サクヤは苦しげな大きな悲鳴を上げた。そしてそのまま僕に抱きついてくる。
「サ、サクヤ!どうしたの!?」
「ト…トキワ、背中がいた…いっ」
「背中?!」
痛がるサクヤを気遣いながらもそっと上のパジャマを脱がせてみると、羽の付け根が真っ赤になって腫れていた。
「サクヤ…これって…」
あまりにも痛々しいその様子に、僕は思わず羽に手を伸ばしてしまった。
「うぁっぁぁぁっ」
途端、サクヤは僕を突き飛ばしテラスの方へ逃げ悲鳴を上げながらカーテンにしがみついた。かなり強く引っ張ったのだろう、カーテンはレールから外れ、サクヤと共に床に崩れ落ちた。カーテンのなくなった窓からは、丁度昇り始めた朝日の光が差し込み、その光は窓際のサクヤを優しく包み込んだ。
すると、その時。
今まであれ程苦しがっていたサクヤの表情から苦痛の色が消え、
そして。
彼の背中の羽が、一枚、また一枚、と抜け始めたのだ。
僕はサクヤに声を掛けることもそばに駆け寄ることも出来ず、ただ茫然とその光景を見ていた。
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