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サクヤが!
人間の年にしたら三歳くらいの幼い子供だったサクヤが。
突然、どう見ても5.6歳の少年に『成長』していた。
「サ、サクヤっサクヤってば!起きろっ早く起きろっっ!!」
「なに…どうしたの…」
「どうしたのって君…何でいきなり成長してるんだ?!」
「せいちょう?」
「だからっなんでいきなり大きくなったのっ?」
「大きくなった?おれが?……?」
僕の激しい問い掛けに、サクヤは、まだ幾分眠そうな瞳をしながら自分の両手を見つめ、体や足をキョロキョロと見回した。
そしてしばらく考え込んでいたが、出てきた答えは。
「わかんないっ」
(やっぱり……)
なんとなく解っていた答えとはいえ、思わずがっくりと力が抜けた僕は、その時、サクヤがもの言いたげにこちらを見つめているのに気付いた。
「ど、どうかした?」
「…おまえ、だれ?」
ガクッ。
僕は再び体から力が抜けてしまった。
でもそういえば、こっちが一方的に『サクヤ』のことを知っているだけで、彼には僕のことを何も教えてはいなかった。
僕は気を取り直して、とっておきの微笑みを浮かべてサクヤを見つめた。
「自己紹介がまだだったね。初めまして。僕はトキワだよ。」
「トキワ?」
「そぉだよ。」
トキワ、ともう一度呟いて、彼は嬉しそうな微笑みを顔中に浮かべた。
こうして、僕とサクヤの不思議な生活が始まることになったのだ。
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