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日は山の稜線に半分ほど隠れ、穏やかになった光が世界を茜色に染める。
夕暮れ。
ミレとアリシアはレーティス教会へと帰宅した。
帰り道はまだ時間も早く、荷物があったため走りながら鍛練はしていない。
そのためさっさと荷物を置いて夕方の鍛練をこなしてしまおうと、アリシアは足早に教会の入り口に向かうと、ドアをバンッと開けた。
「お~ぅ、おかえりぃ」
「あれ?シスター?」
するとその先…聖堂には、大量に並べられた長椅子の一つにシャノンが座っていた。
「シスター、お仕事は??」
「おう。今日は早くアガらせてもらったんだよ。」
シャノンは近くの村や街で農業手伝いや酒場の雑務などをして、報酬を得ている。
何件も掛け持ちしているため、今日のように夕方から戻っていることは珍しいのだ。
アリシアはトタトタと床を鳴らしながらシャノンに近付くと、座ったままの彼女の胸にボスッと抱き付く。
そして顔を上げ、満面の笑みを浮べた。
「おかえりっ!シスター!」
「なんだぁ??なんか悪いモンでも食ったか?」
そうは言いつつも、シャノンも幸せそうな笑みを浮かべながらアリシアの金髪を流れるように梳く。
キラキラとした髪は予想通り何の抵抗もなく、すんなりと手櫛を通した。
―バタンッ―
その時、いつの間にか教会内に入っていたミレが今朝食事を食べた部屋…キッチンから出て来た。
持っていた荷物を置いて来たらしい。
「ミレ、お前もしてやろうか?」
「…却下だ。」
シャノンはアリシアを撫でながら、妖艶と言った感じの雰囲気でミレに語りかけたが、また一切表情を変えることなく拒否されてしまった。
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