memories_2

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  入学式から一か月後…     ―魔法学院・図書室―   メレイサ魔法学院にはその象徴とも言える広大な図書室がある。   利用できるのは生徒と教員のみに限られるが、そこには魔法に関する本をはじめとして地理学・気象学など様々な分野の本が納められており、凄まじい蔵書数を誇る。   そのため背の高い本棚が整然と並べられ、上段のものなどはハシゴを使わなければ取れないほどだ。     ―パラ…パラ…―   そんな広々とした室内に、淡々と本をめくる音だけが響いていた。   時刻は昼前。 だが、本の保護のため窓には薄い幕が張られており図書室内は薄暗い。   ちなみに講義中の時間帯であるため、他の生徒は誰もおらず非常に閑散としている。     ―パラ…―   そんな中、銀髪の少年は椅子に座り無表情のままひたすら魔法書に没頭していた。     入学からある程度の時間が経ったことで、クラスでは友人を作ったり、仲のいいグループで集ったりする者がほとんどだ。   だがミレはそういった者に一切干渉することなく、毎日のように講義をサボって図書室に通っては魔法書の知識を詰め込んでいた。     端から見れば学院に馴染めてないだけのようだが、ミレはこの平和な時間がそれとなく気に入っていた。       ―バァン!!―   「ミレ!ご飯食べるよ!」   突然聞こえた平和な時間の終了を告げる声に、ミレは動きを止める。   そして椅子に腰掛けたまま振り返ると、図書室入り口に立つ人影を見て小さくため息を吐いた。     「…シア。図書室では静かにするのが規則だろう。 加えて、今は授業中だ。」   「そんなの授業サボってるミレが言えた義理じゃないでしょ。 ほら!庭園で食べよ!」     そんな反論も虚しく、アリシアはミレに近付くと手に持っていた本を奪い取り、そのままポンと机に置いた。   そしてミレを引っ張り、半ば引きずるようにして移動を始める。
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