memories_1

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  「…レ……て…」   朝日がカーテンで遮られ、僅かに漏れた光が差し込むだけの薄暗い部屋の中。   床に敷いた簡素な布団で眠る銀髪の少年に、金髪の少女が語りかけている。   少年にとっては、多少鬱陶しくなるほどに毎日毎日聞き慣れた声。     「…ミレ、おきて…」   別段聞こえて無いワケではないのだが、彼は今心地よいまどろみの中にいる。   声を無視し、寝返りをうって少女に背を向けた。     「ミレ…」   そんな様子を見て、少女の雰囲気が変わった。 こめかみにはうっすらと青筋が浮かんでいる。      「…おきろぉぉぉぉぉ!!」   叫びが聞こえたと同時に、少年は目を閉じたまま右手を顔面の前で構えた。   パァァン!   掌が渇いた音を立て、降って来た何かを受け止める。   (…やはり顔面にきたか…)     少年はゆっくりと目をあけると、まず自分の右手が掴んでいるものを見た。     …足。と言うか、踵(カカト)。   次いでその足が繋がる先に目を移すと、ニコニコとした笑顔を顔面に貼り付けた金髪ショートヘアーの少女が、灰色のローブを押さえ片足を掴まれた状態のまま立っていた。     少年は受け止めた足を解放すると、上体のみを起こし彼女を見る。   「…シア。起こすのはいいが、もう少し平和的にできないか。」   「だってミレ起きないし。」   当然の抗議に対して、少女は何ら悪びれる様子もなく言い放った。     「…確かに、僕は寝起きが悪い。それは認めよう。」   だが、この行為を肯定してしまうとそれは今後少年に毎朝修羅場が訪れることと直結する。   …まぁ、すでに毎日くらっているのだが。     「だからといって、何も顔面に踵を落とすことは無いだろう。 もっと軽い方法があるはずだ。」   少年は自らの朝の平穏を守るべく、多少の妥協案をチラつかせつつ抗議を続けた。     「軽いのじゃアンタ反応ないでしょ。 どうせ最後はコレやるんだから、途中は省略したの。 詠唱破棄と同じよ、同じ。」     (…違うと思う。 いや、断じて違うと言いたい。 合理的な魔法の使用法と純粋な暴力を混同させるんじゃない。)     そう思ったが、これ以上何を言っても無意味そうなので黙っておく。     結局少年の抗議・提案は全て却下され、彼の毎朝は引き続き流血スレスレのものとなりそうだ。  
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