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―西暦1272年 春―
ミレ・ヴァイナール 11才
アリシア・クロノス 12才
…
「ほら、シスターも待ってるんだからさっさとする!」
金髪の少女…アリシアはそう言って、まだミレにかかったままの布団をバサッとはぎ取った。
寝床を荒らされたミレは渋々といった様子で、欠伸を噛み殺して立ち上がる。
「…わかった。先に行く。」
そしてそのまま部屋を出て行ってしまった。
「も~!布団くらい片付けなさい!」
アリシアは悪態をつきつつも、てきぱきと布団をたたみ始めた。
聖堂には無数の窓から朝日が差し込み、古ぼけた燭台や装飾具がそれを反射している。
ここはミルト国内、レーティス教会。
人里離れた目につかない場所にあり、既に廃墟と化してる。
当時アリシアとミレは、ここで一人の自称・修道者と共に生活していた。
光を浴びて輝く銀髪を揺らめかせながら、ミレは自室のすぐ隣にある部屋のドアに手をかける。
ギィと古ぼけた音を鳴らして開いた先には、無駄に露出度の高い修道服(らしきもの)をラフに着こなした褐色の肌を持つ若い女性が、漆黒のロングヘアを弄りながら椅子に座っていた。
女性はミレを見ると、待ってましたとばかりに口を開く。
「おっせぇぞ!!
あたしゃ腹ぺこなんだ!
とっとと座りやがれ!」
テーブルをバンバンと叩くその姿は、とても年相応には思えない。
…シャノン・レーティス。
二人の保護者のような存在である、"自称"修道者だ。
ミレは無言のまま、シャノンの正面の椅子に腰かけた。
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