memories_1

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    この日の朝食は保存性に優れた固いパンとベーコン。 …というか大体毎朝このメニューだ。     機嫌を直したアリシアはミレの隣に座り、一口サイズにちぎったパンを口に運ぶ。   ミレは相変わらず黙々と食べ…いや、寝ている。 座ったままパンを握り締め、意識を手放していた。     シャノンはそんな光景を満足気に眺めながら、ふと食事の手を止め、話しかけた。   「そういやよ、今日お前らメレイサに行くんだろ?」   「ふん、ひれにひけんふけはへはいほ…」   「シア、飲み込んでから喋れ。」     シャノンの注意をうけ、アリシアはいそいそと口の中のパンを飲み込むと、改めて言う。   「うん!ミレに試験受けさせないと!」     アリシアは魔法士養成学院の生徒であり、今年から二年生。 学院の教育期間は12歳~18歳までなので、今年12になるミレも学院に通わせようというのだ。     「いいけどよ、ウチに学費払える余裕なんざねぇぞ?」   小さくため息をつきながらシャノンが言う。 それをアリシアは問題無いといった様子で、パンを掴んだままの右手を顔の前で振った。   「大丈夫!いい成績残せば特待生として全額免除されるから!ミレなら楽勝だよ、きっと!」   事実、アリシアも昨年から特待生として通っている。 この制度は、大きな力を持つ者には積極的にその制御法を教えなければならないという考えで開始された。     「楽勝ねぇ…」   シャノンはそう言ってアリシアの隣に視線を移し、ニヤっと笑う。   「う…うん。楽勝…だよ。たぶん…」   アリシアも苦笑いで隣を見た。     「…ぐぅ…」   そこでは、頭をかくかく揺らしながら睡魔に完敗したミレが寝息を立てていた。
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