memories_1

8/21
前へ
/43ページ
次へ
  ―ブォッ!―   ミレはアリシアの右回し蹴りをステップで距離をとることで躱し、そこでできた隙に一気に踏み込んで腹部に右拳を繰り出す。   ―ガッ!―   アリシアはミレの拳に左手を添えると、回転の勢いを利用して受け流し、そのまま体を一回転させ後頭部に右肘を叩き込む。   ―ヒュッ!―   ミレは受け流されて前につんのめったが、そのまま敢えて前方に倒れこむことで肘を躱す。   そして地面に手をつき、足を振り上げると独楽のように回転して倒立の回し蹴りへと発展させた。   ―ブォンッ!―   だがそれもアリシアは体を反らせて躱す。     道中、二人は走りながら高速で組み手を行なっていた。   これらはシャノンから教わったもので、毎日朝と夕方には武術の鍛練をするように言いつけられている。   なぜそうしなければならないのかと尋ねた時、シャノンは「世の中物騒だからな」と適当な理由で誤魔化していたが…   二人は結構武術を気に入っていたので、きちんと毎日続けていた。       メレイサまでは馬で一日かかる距離なのだが、アリシアとミレはそれをたった一時間で走破できる。 しかし、その一時間がもったいないので、朝鍛練せずにギリギリまで寝て、その分走りながらやろうという一見効率的だが無茶苦茶な提案がミレから出された為、このようなことになっているのだ。       (さすがにちょっとキツいかな…)   アリシアの頬を玉のような汗が伝う。 いつも走るだけなら余裕なのだが、戦いながらとなるとその疲労は数倍。   ミレも表情にこそ変化が無いものの、同様に汗をかき、息も少し切れている。     実は二人とも内心キツいと思っていたのだが、出発直後アリシアが提案した『遅かったほうが何でも言う事一つ聞くゲーム』の導入により、まったく手が抜けないのだった。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

383人が本棚に入れています
本棚に追加