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ウォーオー!
またしても遠吠えが聞こえた。
「~」
デンタはもはや言葉を失って一歩も動けなくなった。
オオカミは微動だにしないが、完全な威圧感をほこっている。
デンタはもう終わりだと思った。
「ごめん…父さん…」
デンタがそう言うと、木々の隙間から月の光が差し込んで、オオカミを照らした。
「へっ!?」
デンタは目を丸くした。
デンタがオオカミだと思っていたそれは、オオカミの形をした石像だった。
「な、そういうことか~」
デンタは座り込んでしまった。
オオカミの石像はよく見るとかなり荒削りだった。多分、風にすごく長い時間ふかれて、今のような形になったのだろう。遠吠えの正体は風の音だったようだ。
「しっかし、世の中こんなデカイ石もあるんだなぁ。しかも、風でオオカミの形になったんだろうな…ん?…そうか!」
いきなり、デンタは我に返ってエレキ・ストーンを握りしめた。
「そうか…もしかして…」
そうつぶやくと、静かに目を閉じ、耳をすました。
ヒューヒューと風の音だけが聞こえる。
「自然に身を任せるっていうのは、つまり自然に逆らないということか…」
すると突然、風がピタリとやんだ。
「来る…」
デンタは身構えた。
次の瞬間!
ビュオッ!
いきなり突風が吹いた。デンタはそれを見逃さなかった。
『サンダァーッ!!』
デンタがエレキ・ストーンを振ると、いままでまったく出なかった雷が出てきた!
「よっしゃっ!」
デンタは思わずガッツポーズをした。
出てきた雷は威力・スピードはエンゾウには劣るもののなかなかのものだった。
デンタの放った雷は風にのり、まぶしく輝きながらオオカミの石像に当たって消えた。
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