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ここはマウン村。
周りは山々で囲まれており、村の中央を流れる川以外に特に目立った場所も無い。
しかし、日の光が山の緑をよりいっそう深くし、川はその光でキラキラと輝いている。何も無い方が良いかもしれない。
家も木造の小さな小屋が数軒あるだけで、村の人口も十数人ほどである。
今日もいつもと変わらず、時が止まったように静かな昼が過ぎてゆく。
唯一、響く音といえば山の方からカーン、カーンと木を切る音が聞こえる。
その木を切ってる人物の名はデンタという。
年齢は10代前半の小学生高学年くらいの感じである。無造作な髪型にキラキラと輝く瞳が特徴的で、顔や体中に傷があるとこからワンパク少年を連想させる。全身に汗をかきながら、渾身の力で斧をふっている。
バキッ!
すると突然、木を切る音が変わった。
「おっ!」
デンタの顔に笑顔がみえた。
「もう少しだな。このバカでかい木が! てこずらせやがって!」
そう言うと、最後の一撃といわんばかりの力で斧を振るった。
バキッ!
メキッ! メキメキ…
ズドーン!
ゆうに10mはあろうかという大木が、わずか150cmほどの子供の力で切り倒されてしまった。
「朝から粘ったかいがあったぜ。これで村の焚き木はしばらくもつな」
そういうとデンタは村の方へ走っていった。
「さぁ、父さんを呼んでこないと…」
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