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それに対し、妹は五日後に海から引き上げられたのにも関わらず、水をあまり含んでいない生前に限りなく近い状態だった。
今回も全く防腐処理や防臭処理を施されてはいなかったが妹から眉をしかめ鼻を押さえなくてはならないような臭いはしなかった。
寧ろ、懐かしい磯の香がほんのりと部屋の中を満たしていた。
しかし妹の足もとから首元までを覆っていたブルーシートの隙間から、見えるはずのものが見えなかった事、何故かへこんでいる事に疑念を抱き、俺は勢いよくシートを剥がした。
絶句。
おれは言葉を失い妹のへそに手を置いた。
いや、正確にはへそがあるべき場所に。
妹の死体には左鎖骨から下が存在しなかった。右胸の乳房から左が存在しなかった、左の腰から上が存在しなかった。
まるで何かに食いちぎられたように左上半身がごっそりなくなっていた。
その現実感の無い妹との再会に、家族の死というものを受け入れることができない。
勿論妹だけではない。お袋と親父に関しても同じことだ。
酒を飲むような奴らじゃないのに。
警察側もこの事件に関して、妹の死体のあり方にもわだかまりを残しつつ、事故として処理した。
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