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そして何もいない虚空を睨みつけ俺に声をかけた。
「狼なんかにボクはやられない。絶対に」
そんな事を言い終わらないうちに、杏はコンビニのビニール傘を中段で構えた。
なんでかな?女の子がボクとか言うとなぜにこんなに可愛らしいんだ!等と俺が、考えてるうちに事態は進む。
「力だけなら負けはしないよ」「この傘は特別製よ簡単には折れないわよ」「えい!」「二匹がかり?面倒、まとめてきなさい!」「私にはそらを飛ぶ能力があるのを忘れてるのかしら?」「二匹片付いた、のこりは三匹!」
……………。
さっきも言ったとおりあの傘は特別製なんかではない。コンビニの100円傘。あのちょっと小さいやつ。
杏にとってはそらを飛んでいるつもりなのかも知れないが、賽銭箱から降りず腰をかけたまま微動だにしていない俺の目には、どう頑張っても飛び跳ねて50センチほど浮くと、直ぐに引力と重力に従い地面に落ちるいわゆる世間一般のジャンプにしか見えない。
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