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「やべ、こいつ寝ちまってる」
俺の左手首に覆いかぶさるように寝ている杏。
神社周辺に全く人の気配はしない。やましい気持ちがないと言えば嘘になるこの状況。
どうしよう?つか、いい太ももしてるよな~………って一六歳の少女相手になに発情しかけているんだ。
それ以前に、一応こいつ親戚なんだよな………うん。
俺は邪念をわざとらしく首をふって振り払い、杏を背中でおぶった。
微妙に重い。
朧月がぼんやり地面を照らすその明りを頼りに、俺は帰路につこうと一歩一歩ゆっくりとした足取りで石の階段を下り始める。
その際一枚のカードが俺のジーパンのポケットから落ちた。
白を基調にデザインされたそのカードを背中の杏を落とさないように少しあわて気味に拾いあげる。
「これが事の始まりなんだよな…………」
俺はそのカードをなんとも言えない気分で見つめポケットに直し再び帰路につく。
背中でもそりと動いた杏を少し軽く感じ、朧月のもやがとけ上弦の月が明るく見えた。
綺麗だな。
俺は、背中にいる杏を落としそうになりながらそんな事をぼんやり考えた。
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