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深夜0時を越えて俺も刑事もイラついていた。
逮捕状が出ない
長谷川部長と呼ばれる、俺の担当刑事はデブだ
デブは愛嬌があると世間では認識されているが、さすがに刑事と言うべきか、目の奥には刃物の様な鋭さが見え隠れし俺を萎縮させる。
逮捕状がでるまではあくまでも客人
扱いはひどく悪いが、まだ容疑者ではない、参考人なのだ。
重たい口を開けば、少しでも物事を好転させたい一心とは裏腹に
『逮捕状はまだですか』
と己を追い詰める言葉しか出ない。
刑事の口から出る言葉に自分の名前が含まれる際に『くん』付けが痛い。
現時点では、所持品―――携帯、財布、時計……等々は一応は自由に使える。
何日になるかは、わからないが今日は確実に帰られない事は既に決まっている
せめて身近な者に連絡をとりたかったが、逮捕状待ちなだけで参考人→容疑者の流れは決定なので、心象を悪くするのは後々不利と踏んで一応、お伺いを立て聞いてみた。
『あの、携帯……メールが来てるんで見てもいいですか』
『ん ああ…見るだけ 見るだけなら、構わんよ』
見るだけならと数回、口の中で繰り返し呟いている。
釘を差すとは こういう事だろう あくまでも見るだけだと。
携帯を開くと 母親からと彼女からメールが来ていた。
母親のメールに至っては俺の体を心配する内容で、追い込まれている俺に罪悪感が一気に噴き出してきた。
『あの すみません 返信は、しないほうが……』
言い終わる前に長谷川部長が俺の目を見据えて言った。
『しない方が いいだろうな』
わかりましたと軽く頭を下げて携帯をしまったが、正直気が気ではなかった。
00:17分 逮捕
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