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ドラマや映画でしか見た事のない手錠。
自らの罪を悔いるように、自然と両手を刑事に差し出す俺がそこにいた。
思ったよりもずっと軽く、少し無理をすれば手を抜く事ができるくらいソフトに余裕を持って施錠される
『痛くないか キツクないか』
そう声をかけられる。
俺はこの時、まだ頭の中が整理されておらずイマイチ現実を把握できていなかった。
これは手錠をかける予行練習か何かかと思ったくらいだ。
手錠は黒く
軽く
緩く
冷たく
だけれど、確かに俺の両手の自由を奪っている。
薄い現実感の中で俺は、肉体ではなく自由という目に見えない何かを拘束するための道具なのだと、霧のかかった頭で認識した。
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