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最近、蒼空は夢をよく見るようになった。暖かい何かに包まれているような、守られている感じ。そして、最後には必ず誰かが優しく頭を撫でてくれる夢…そこで目が醒める。
「…ッたく…またかよ…」
蒼空は、最近見慣れつつある、自分に腕を廻し爆睡している永久を眺めながらため息をつく。
始めは布団に別々に寝ているのだが、朝目を覚ます頃には先程の抱きすくめられてしまった状態で目が醒める。
おまけにちょっとやそっとでは、どんなに力を入れても永久の力はビクともしないのだ。
「この馬鹿力…」
口では悪態をついても強く抱きすくめられていると、少しずつ互いの心音が重なり合っていくのがわかり、何故か安心してしまい強行に蹴り倒すことが出来ない。
(人って暖ったかいんだ…!って何ちゅうハズいことを考えてんだ…。)
蒼空はこのまま再び布団にくるまって寝たい誘惑にかられた。が、時計をみるとそろそろ起きないとコンビニのバイトに遅れてしまう。
「起きろ!!永久ってばっ!!」
蒼空は、永久の胸を叩いてなんとか這い出そうとしているが、思うようにいかない。
「永久ってば!……朝飯出来ねぇぞ…」蒼空が呟くと、ようやく永久が動く。
「……んん~あと10分……」
永久の掠れた声が蒼空の頭上から降ってきた。
「10分…じゃねぇよ‼甘ったれるな~バイトに遅~れ~る‼離~せ‼」
さんざんジタバタし蹴りなどいれたおかげでなんとか抜け出すことに成功する。が……。
「……痛い。蒼~空~…‼」
不機嫌MAXの永久に抱き込まれて再び永久の腕の中に舞い戻ってしまう。
(だ~か~ら~!!なんで動かないんだよ…)
2人が朝からバトルを繰り広げているとベルがなった。
(…この時間帯のベルってことは……っ!?)
蒼空は勢いよく永久を突き飛ばすと、玄関のドアに急ぐー。
「おいっ!いるんだろ!?」
爽やかな朝に似合わぬ野太い怒鳴り声と扉を叩きつける音が辺りに響く。
「は、はい!すいません!今開けます!」
(忘れた!ヤバい。今日はっ…!!)
蒼空はすっかり忘れていたことに、愕然となった。
(そうだよ、今日は『回収日』だった!)
蒼空が勢いよくドアを開けるとそこには、黒ずくめに眼鏡が似合う、凄みのある長身の男が睨みをきかせていた。
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