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「おぅ!蒼空ちゃんよ~金借りてる分際で、偉くまた今日は遅い出勤で~」
先程からの野太い声の主、山口が近所迷惑関係なく声を張り上げている。体力だけは自慢がありそうなこの男の嫌味たらしくズケズケいう話し方が蒼空は嫌いだった。蒼空の柔らかった表情が一瞬にして冷めた大人の顔つきになる。
「おはよーゴザイマス、山口さん。まだ朝の八時だっていうのにご苦労様です。案外、暇なんですね借金取りのお仕事って」
「!っ。なにぃ~!!」
「だってそうじゃないですか、わざわざこんな時間に迷惑を考えず、怒鳴りこんでくるんだから…迷惑です」
「テメェッ!!」
「何ですか、」
蒼空は一歩もひかずに山口を睨みつけ、全身で山口に向かい合う。
「よせ、山口」
と、お互いに一歩も譲らない、蒼空と山口の緊張した雰囲気を変えたのは、落ち着いた男性の声。
「山口、テメェの声は確かにでけぇ、蒼空のいうとおりだ。俺達は確かに金貸しだが、だからといって何をしてもいいわけじゃないー昔じゃねぇんだ。頭使え」
「へぇっ!!」
更に、今まで怒鳴っていた山口が頭を90°下げ、後ろに立っていた男に道を譲る。
一言一言に妙に説得力があり、男の落ち着いた佇まいからは粗野な感じは一切感じられない。が、威圧感は山口よりも更に強い。
(…!!なんで知治さんがいるんだ!?)
蒼空は表情にはださないものの、内心焦っていた。
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