峠で壊れて

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[彼女も最初はタイヤをスリップさせながら曲がるドリフトやカウンターを当てるような逆ハン走行にびっくりしてたみたいだけど] 一年以上も付き合ううちに[慣れてしまった]ようだという。 [ああいうのはホント女には分からない世界。まるで野性の勘で動いてるような気がする]  友達は呆れた口調で川上さんに告げた。 [それでああいう危険な運転をする人ほど安全には細心の注意を払っているんだろうなって、思うところもあって]  なかば安心していたのだが……。  事故が起きた。 [対向車にぶつけたとかいうんじゃなくて完全な自損事故だったらしいんだけど]  車はカーブで曲がり切れず車体は斜めに滑らせたまま、そのままガードレールを突っ切って林の中へと落ち込んだ。 [アッて彼の声が聞こえたと思った瞬間、もう何が何だか分からなくなっちゃったみたい]  暴力的な重力と慣性に体が振り回された、一瞬が車体の潰れる派手な音で終わると車内にまでタイヤの焼ける臭いが充満していた。
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