26人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女が息を飲んだ瞬間、近くでバキバキと枝の折れる音がし、それとともに人の話し声が近づいてきた。 とっさに彼女は背もたれと後部ドアの隙間に身を投げ込み、最後部シートの下のわずかな空間に隠れた。 ドアが乱暴に開けられるとドサッと重い物が投げ込まれた。
人間だった。
ちょうどそれは背を向けて彼女の目と鼻の先に落ちたという。
[ついてねぇ……]
自分の隠れているシートが大きく軋むと同時に唸るような声が響いた。
声の主は転がったままのそれを靴でボンボンと蹴り上げた。
蹴られた相手からは全く反応がなく、ただ力に任せて揺れているだけだった。[別の場所で埋めよう。仲間でも呼ばれると面倒だ] 車が動き出すと運転席から別の声がした。
[ちきしょう……ちきしょう]
シートの上の男はそう言うとバールのようなものをザクズクと倒れている人間に突き刺し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!