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思わず驚きの声が漏れた。
すると女はにやりにやりと笑いつつ、両手を万歳するように宙に突き出し、[ふりーずぅ、ふりーずぅ]
と、くり返しながら階段の下り一番下で振り返ると[馬鹿者]
と吐いて駆け出して行った。
[その時ですね。ああ……可哀想になっちゃったんだなって実感したのは]
高橋はそう言ってこめかみのところに指で渦を巻いた。
そんなことがあってから高橋は女の姿を見掛けると警戒するようになった。 女の家は高橋のアパートから目と鼻のところにあり、父親はサラリーマンをしているのかスーツ姿で通勤して行くのを見たことがあるが、母親らしき人間は見たことがなかった。
夜中に帰宅した時など悲鳴のようにもヒステリックな哄笑にも取れるものが聞こえた。
[それと……はっきりはしないんですけど、その頃から]
深夜にドアが叩かれているような気がするのだという。
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