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「おお・・・」
家賃の安さから即決し、大した荷物もないのでカメラの道具だけをもって新居にやってきた俺は、驚きの声を上げた。
その、凄まじいボロさに・・・。
「ああ、あんたが新しい入居者か。まあ変わり者ばっかりだが、慣れれば悪かあないもんだぞ」
そう言って鍵をくれた大家の松屋さんは、厳しそうだがいい人のようで安心した。
もう夜も遅い、とりあえず住人への挨拶は明日にしようか。
正直精神的にもまいってるし・・・。
「お、新入りかあ」
ドアを開けようとした瞬間、隣のドアが開いた。
「あ、はい。三条という者で、よろしくお願いします」
「ああ、わいは遠橋や。よろしゅうな」
正直、一瞬ひいた。
別に関西弁だからではない。
その、風貌に・・・。
背はかなり高くガタイもいい。黒髪を腰ほどまで伸ばし、サングラスをかけ、柄シャツを着た隣人。
どう考えても、まともな職についている者ではない。
「おっと」
しまった。鞄をしっかり閉めておくべきだった。
俺が元師匠から突っ返された写真が、鞄からこぼれ落ちた。
「ん?写真?」
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