心、一人の少女

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「うおっ、これは………」 口の中に広がる風味、絶妙なスパイス加減。とても家庭で食べるとは思えないカレーだ。 「………! 杏里、あんた凄いよ」 「美味しい」 「良かったぁ、初めてだったからどうなるかと思ったよぉ」 杏里さんがどっと肩を撫で下ろして安堵の表情を浮かべた。 「これで初めてですか?」 「うん、ちっちゃいものならちょくちょく作ってたけどカレーなんて初めてだったから」 それにしてもこのカレーの美味さは異常だ。食が止まらない。 「これヤバイです、おかわり貰っていいですか?」 「やっぱり裕君はたくさん食べてくれるね、どんどん食べてよ」 お言葉に甘えて俺は席を立ち上がった。 こんなカレー、うちの母さんでも作れない。ここに来て正解だったな。 炊飯器の横にあるしゃもじに手をかけようとすると誰かの手に当たった。
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