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「あっ、待ひなひゃい裕くん」
杏里さんが立ち上がりふらふらとよろめきながら俺を追ってくる。表情は険しいが全く怖くない。
おっさんじゃねぇか、こんな杏里さん見たくないよ。
俺は逃げ続け杏里さんは追い続ける。室内鬼ごっこが繰り広げられた。
そして杏里さんがよそ見をした瞬間を狙って俺はソファの後ろに身を潜めた。
泥酔状態の杏里さんに俺を見つけられるはずがない。
「にゃら? 裕くんはどこに行っひゃったのら?」
必死に探す様子が頭に浮かぶ。なんか捕まったら嫌な予感がするし。
「あれ? 裕くんがいないよぉ、どこ行っひゃったの? 裕くぅん………」
まさか泣いている? なんてことだ。
俺はもう杏里さんを泣かせたくはないって誓っていたのに。俺は愚か者だ。
俺は立ち上がった。
「杏里さん、すみま」
「裕くん、みーひゅれた!」
目の前に杏里さん、表情はいたって笑顔。
しまった、騙された!
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