花火、思い出の場所

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俺は全力で逃げた。まさに獲物を追う虎もびっくりなくらいのスピードだったはず。 それでも悪魔には勝てなかった。 『ゆっうちゃん!』 『うわぁ!』 走っている最中に抱きつかれたためバランスを崩してそのまま倒れ込んでしまった。 『ふえっ、痛い、痛いよぉ!』 『あらら、そのくらいで泣いちゃったら男じゃないよ。さあ、あっちに戻ろ』 『いや、いやぁ!』 当時の紫音は俺にとっての最大の壁で、いじめかと思うほどひどいことをされてきた。 『紫音、裕君が可哀想じゃない』 『ぶー、だって裕ちゃんが弱いんだもん』 こうなると決まって杏里さんは俺をかばってくれた。俺は杏里さんを本当の姉のように慕っていた。 多分杏里さんがいなかったら紫音のいじめに耐えきれずに引きこもりになっていたかもしれない。 いやはや、感謝感謝。
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