お姉さん、杏里

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「………はぁはぁ」 「待ちなさい裕ちゃん! 今日こそ捕まえちゃうんだから!」 雲ひとつない青空、降り注ぐ太陽。風を体全体で感じる、景色がどんどん変わっていく。 僕は城石裕大(しろいし ゆうだい)、小学一年生。今幼稚園の時からずっと一緒だった幼なじみ、植本紫音(うえもと しおん)ちゃんから逃げているところだ。 周りから見れば楽しそうな鬼ごっこに見えるだろう。でも僕は違う、必死なんだ。 「裕ちゃん、あたしから逃げようなんて100年早いんだよぉ」 「100年も生きれないよぉ!」 紫音ちゃんはとにかく速い。僕がいくら頑張っても絶対に勝つことはない。紫音ちゃんに敗北という文字はないんだ。 汗が頬を伝う感覚がよく分かる。追われてる理由は、 ………なんなんだろう? 僕は逃げることしか考えていない。
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