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楽しい時間はあっという間に過ぎて行く。すっかり夕暮れになってしまった。
「帰りましょう」
「そだね」
すでに着替えを済ませた俺達は海水浴場を後にした。
「私はこっちなんで。今日は楽しかったです。杏里お姉さま、さようなら」
「それじゃね、澪子ちゃん」
一礼をして澪は歩いていった。俺は無視かよあの野郎。
「僕、裕君に言わなきゃならないことがあるの」
「言わなきゃならないこと?」
「うん、僕ね、実は溺れてなかったんだ」
ここで爆弾発言ですか。
「溺れたふりをしてみたの。裕君ならきっと助けてくれると思ってたから。裕君は当たり前のように僕を助けてくれた、ありがとう」
夕陽に照らされた杏里さんの笑顔はとても綺麗だった。
「当然です、俺は杏里さんを一生守りますから」
「ゆっ裕君、それは、そのっ」
杏里さんは顔をうつ向かせた。何かを隠してるような。
「杏里さん?」
「うっ、早く帰ろっ、ねっ?」
杏里さんの頬はほんのり赤らめていた。
それが夕陽のせいなのか俺には分からない。
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