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しかし台所に近付くまでに香り漂うこの臭い。まさか………
「じゃーん、今日の晩ご飯は僕特製の野菜炒めに麻婆茄子、ロールキャベツだよ」
机いっぱいに並べられた料理。見映えはバッチリ、見た人を虜にしてしまうようなおかずだ。
だけども俺は食べれる気がしない。なぜならメニューに共通して言えるのは野菜のフルコース。そして俺は野菜が大嫌いだ。
どうしてこんなにも都合よく野菜のオンパレードになるんだ? さすがに杏里さんは俺の好き嫌いは深く知らないはず………
考えられることはただひとつ。杏里さんの横に立っている生きる悪魔だ。
俺は野菜が好きだ、みたいなことを言って杏里さんに作らせたんだな。その証拠に口元だけが怪しくニヤけている。
だが杏里さんの作った料理を食べないわけにもいかない。
「裕君、召し上がれ」
俺も男だ、腹をくくるしかない。
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